2017年 04月 15日
賭博師は祈らない |
賭博師は祈らない (電撃文庫)
posted with amazlet at 17.04.15
周藤 蓮
KADOKAWA (2017-03-10)
売り上げランキング: 12,778
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電撃新人賞の金賞受賞作。タイトルとあらすじから手堅い佳作の匂いが既にしていた、僕くらいのラノベ読み中級者以上になると購入した時点で「金賞は妥当、だがあと一押し足りない」的な感想の構想がもう読む前に沸き上がってきてるからね。で読んだ感想。「金賞は妥当、だがあと一押し足りない」でまあ大体合ってた。十八世紀末ロンドンの夜の賭場の退廃的でハードボイルドな雰囲気はとりあえず違和感は覚えない程度には良く出せているし、厭世的な主人公が成り行きで手に入れた奴隷の少女リーラとの交流で少しずつ変わっていくというボーイミーツガールを話の主軸にしつつ、最後には熱いギャンブルバトルで盛り上がる構成は王道でありながら王道の退屈さをまるで感じさせない見事なもの。作風はちょっと、いやかなり「狼と香辛料」の支倉凍砂に似すぎているのがオリジナリティという点では少しマイナス評価ではあるが、ただそもそもの支倉凍砂の作風自体が異端というか「皆真似したいと思ってるけど真似できない」タイプのものであるため、たとえ模倣や追随であったとしてもそれができているだけで実は結構凄いことでありセンスがあることの証明である。ヒロインリーラとの交流シーンはラノベとしては展開が遅すぎてもどかしさを覚える部分も多いが、その緻密さと丁寧さが結果として作品に文学的な深みのようなものを与えることに成功しているのでそこは好みの問題にもなってくるかもしれない。個人的な好みから言えばちょっと萌えを前面に押し出しすぎないことを意識しすぎたか、リーラの可愛さアピールが弱く庇護欲の共感が沸きにくかったのは残念だった。本家・支倉凍砂はあれでかなり萌えを意識し、隙あらば読者に媚びていたのだがラノベなのだからそれくらい(やりすぎるくらい)で丁度良いと思うのだ。次回作が読めるなら作風はこのままで良いので、もう少し女の子の萌えをあざとく取り入れてみて欲しいと要望したい。ただラストのギャンブルバトルはかなり読み応えがあって興奮できた、最後の大張りで全てを手に入れるか失うか、という緊張の汗を読み手にかかせる物語吸引力は新人の仕事とはとても思えないほどのレベルに既に達している。オチの付け方もこれも支倉凍砂的ではあったが良かった、狼と香辛料が好きだったラノベ読みになら絶対に楽しめる良作であることは保証しよう。支倉凍砂的な話を書ける才能はほんとに貴重なので、このままの路線で育っていってくれることを切望する。
<個人的評価>☆☆☆☆
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by yukky_kamakura
| 2017-04-15 23:11
| ラノベ