2018年 07月 23日
エロマンガ先生 10 |
エロマンガ先生(10) 千寿ムラマサと恋の文化祭 (電撃文庫)
posted with amazlet at 18.07.23
伏見 つかさ
KADOKAWA (2018-07-10)
売り上げランキング: 487
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主人公とヒロインは既にお互い好き合っていて婚約まで果たしてしまって、世間一般のラブコメの感覚からすれば「めでたしめでたしで終わり」となるべきところまでやっておきながらまだまだ引っ張る気満々の第10巻。ここでかつての恋人候補であったハーレムメンバーの一人、ムラマサ先輩にスポットライトを当ててくるのは何というか、サッカーW杯が終わってあー楽しかった、次はまた4年後かぁと思っていたら突然日本代表が「今から優勝国フランスに挑戦を申し込む! 俺達が勝ったら世界一は実質俺達!」って言い出し始めるくらい「今更何見苦しいことやってんの?」感がアリアリに過ぎると読む前は呆れてたんだけど(伏見自身、主人公正宗の独白を借りて「この展開ラノベだったらもう続き書けないよな」みたいな皮肉めいたことを言っている)、キャラクターの魅力とシンプルながら吸引力のあるストーリーでその無理を強引にねじ伏せて読ませる一冊に仕上げているのはすごい、正直な感想として「負けたー」と思ってしまった。まず最初の主人公へのアプローチが「めちゃめちゃエロくて面白い不倫小説」というのがやられた、そう来たかと額を叩かされるほど良かった、小説への情熱と才能だけが突出しているが本人は内気で常識に疎い子、というムラマサのキャラクターがこの「想い人に婚約者を作られる」という詰んだ状況でどう行動を起こしてくるかと考えたら、なるほど確かにエロくて面白い不倫小説を想い人に向けて書くというのは最も道理に叶っている。そのエロい小説を巡って父親を巻き込んでドタバタと騒ぐ(「鵙落」とか「鎌鼬」とか必殺技名をつけている下りは面白すぎて笑った)前半部分は導入として文句のつけどころが見つからないくらいパーフェクトであり、文化祭を一緒に回りたいという展開への運びをすんなりと受け入れることができた。文化祭から先については…まあ良くも悪くもいつも通りのそこそこ面白いコメディが延々と続く。もう既にそれぞれ個性や魅力を存分に発揮してきたキャラ達が絡み合ってるわけなので掛け合いが面白くないことはない、「文化祭を回る」というシンプルなストーリーはその掛け合い漫才を邪魔せずうまく引き立たせてはいる。出すべきではなかった巻になるだろうと予想していたがそうはならなかったことは素直に賞賛したい。しかしこれは僕の個人的な好みの話なのかもしれないが、フラれると結末が決まっている女の子が予定通りフラれる様を読まされるというのは、どれだけ良く書けていたとしてもやはり後味は良くない。ハーレムメンバームラマサ先輩の恋のエピローグエピソードのための巻、という「話を畳むための作者側の都合」が透けて見えすぎてしまうのも好きになれない大きな要因だと思う。次はどうせまた一巻使ってエルフを丁寧に振るんだろう、それはやらないで欲しいという思いとエルフの供養のためにやってから終わらせて欲しいという二つの感情がどっちもあって我ながら大変に面倒臭い。まあ読むけどさ。とりあえずこの10巻が予想より良くできていたことは事実であり、そこはちゃんと評価しておきたい。
<個人的評価>☆☆☆★
by yukky_kamakura
| 2018-07-23 17:37
| ラノベ